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「せんせ……」
「んだよ」
「……もぉ、してっ……」
これ以上、何かされたら、憶えていられなくなるかもしれない。
女から頼むのはどうかとも思うが、一回きりの機会だ。言わなかったら、後悔する。
「……ほんとに、ヤんのか?」
大丈夫な日だと言った時には納得した様に見えた壮介は、ここに来てまた怯んだらしかった。
「……だめなの?」
「や……だから……」
据え膳なのだからさっさと食ってしまえば良いものを、何故か壮介は口籠もった。
「……だって……いっぱい、さわってほしいっ……」
「……分かった。」
目を閉じて、溜め息を吐かれる。懇願したのにそんな風に返されて、普通だったら怒るか悲しむかする所だろう。
けれど千都香は、素直に嬉しかった。壮介がどんな気持ちで抱くのだろうが、される事には大きな違いは無いだろう。一度きりなら、全部欲しい。それを、ずっと大事に抱えて生きるつもりなのだから。
「止めたくなったら言えよ。善処はする」
「ん。んっ……ぅ」
くちゅ、と何かが宛てがわれる感触がする。その場所を見る事は難しかったので、千都香は壮介の顔を盗み見た。いつもの様に、眉間に皺を寄せている。こういう時にする顔も不機嫌な時とあまり変わらないんだなと、切ない様な泣きたい様な、複雑な気持ちが胸を塞いだ。
「ぁ」
くんっと入り口を何かが越えて、体の中と外とに同時に熱が感じられた。壮介が、何か堪える様に息を詰めている。千都香の体に触れる為に、何かを我慢してくれているのだろうか。
なんだか、可愛い。嬉しい。幸せだ。ぞくぞくする程、愛おしい。
「ぅ……あ、ん……」
少しだけ進んだ所で、何故か壮介は、一度止まった。
そこも、時々、むずむずする。僅かに動いて触れる場所が変わると、声が漏れてしまいそうになる。
だが、出来ることなら、もっと奥にも触って欲しい。一番奥の、千都香でも触れない様な所に。
そう言ってみるのは許される範囲内だろうかと千都香がぼんやり思ったところで、壮介がぼそりと呟いた。
「お前……もしかして……」
「ふぇ?……ぁ、んんっ…………ん、ぅ、」
ぐっ、と押し広げられる感じがする。嫌では無いが、少しだけ苦しい。千都香の頭は慣れない感覚に対処しきれず、ぼうっとして来た。
そんな頭に、壮介の冷や水を浴びせる様な言葉が聞こえて来た。
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