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「…………悪かった。」
「え」
触れていた腕が緩み、体が急に解放されて、自由になる。壮介はそのまま千都香の正面に周り込み、頭を下げた。
「最後にセクハラだか弟子ハラだかして、悪かった。二度としねぇから、忘れてくれ」
「……いやっ……」
「え」
潔く謝られたというのに、千都香は壮介の謝罪を拒否して抱き付いた。
「……やだっ、やですっ……」
「おい」
作務衣に縋り付きながら、千都香は必死で訴えた。
抱き付いた千都香を、壮介が抱き返す事は無い。やはり、さっき背後の壮介にもたらされた愛撫は、幻の様な物だったのだ。
けれど、もう少しだけ。自分の想いがもう少しだけ叶えられたら、この先壮介に会えなくなろうが嫌われようが、千都香は生きていけそうな気がした。
それで誰かを裏切ったとしても。
「私、先生に、触って欲しいっ……」
「千都香っ?!」
とんでもない事を口にした千都香に、壮介は驚いた目を向けた。
「だって、ずっと触ってほしかったっ」
「お前、何言ってんだ」
千都香の言葉に、壮介が慌てた。引き剥がされそうになった千都香は、腕を伸ばして壮介の首に飛び付いた。いやいやをする様に頭を振って、頭を壮介に擦り付ける。
「どうなっても良いから、ずっと触って欲しかったっ!!だって、先生、私に、なにか越しにしか、触らなくって……まるで」
「おい、待て」
唇に、壮介の胸元の肌が触れる。千都香は先程された様にそこに唇を押し当てて啄んで、ちゅっと音をさせて吸い上げた。
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