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「とにかく、帰れ。頭冷やせ」
「やだ、ここに居る」
駄々っ子の様に、首を振る。
千都香は、なりふりを構うのは止めた。駆け引きなど使えない千都香に出来る事など、限られている。
「……ごめんなさいっ……迷惑掛けて、ごめんなさい……もう、わがまま言わないから、」
「お前」
「……だから、今日だけ……一回だけっ……だめ?」
千都香に見上げられ、壮介は呻いた。
望みをただ口にする事を、千都香は選んだ。それに何と答えるかは、壮介が決める事だ。
「……俺に、お前を、痛めつけろってか……」
唸る様に、壮介が呟く。
「私、痛めつけられたりしませんよ?……だって……っ」
不意に壮介に引き剥がされて、千都香の目から、涙が落ちた。
捨て身で強請った望みは、叶わなかった。もう二度と、壮介が自分に触れる事は無いのだ。
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