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解雇通知
「以上の事により、勇者の一人であるアルト・ハスイケは勇者の資質に重大な問題があるため、勇者の資格を剥奪すべきである!」
ザンスット王国、王城の謁見の間にて、大臣の発言後、正面の一段高い所に座る国王は考え、一息ついて、
「今までご苦労であった。アルト・ハスイケの勇者の任を解任する。王家より貸し出されていた宝物を返却しこの国を出るがいい。
以後、我が国への入国を禁止する。
だが、これまでの貢献を考え一日の猶予を与える。」
国王はそう告げると片膝をついた僕、『アルト・ハスイケ』こと『蓮池 在人』に視線を向ける。
その視線は何か複雑な物を感じさせた。
「わかりました。」
僕がそう言うと、近衛兵は僕の退出を促す。
退出時、国王の両脇に一列に並ぶ複数人の男達の中、今まで一緒に戦った防衛隊の隊長が悔しそうに俯いている。
その中にいる枢機卿と隣にいる男は薄ら笑いを浮かべている。
謁見の間を後にし、衛兵に付き添われこの城で使用している自室に向かう。
衛兵は一言も発さず、僕の部屋の扉を開け、入室を促す。
僕が入ると乱暴に扉を閉め、
「外出する時は声を掛けろ!また、他の勇者様達には会わせないからな、この罪人め!!」
部屋の外から罵声に近い声で言う。
僕は今まで使用していたロッドを手に取り、部屋に備え付けられたベッドに座る。
それを眺め、同じく備え付けの机の上の積み上げられた幾つもの辞書に視線を移す。
「これって自分で返しに行ったほうがいいかな?」
知らず知らずに考えが口に出ていたようだ。
不本意だが部屋の外にいる衛兵に声を掛けないといけないなと、ため息が漏れる。
結局、外出も億劫になりベッドに横になりそのまま寝てしまう。
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