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おばあちゃんの思い出
夏海は、タカラジェンヌ時代の
小百合のアルバムを薫に見せていた。
祖母の小百合は、歌劇団では
男役トップスターであった。
「おばあちゃん、カッコイイね」
「そうでしょ?
おばあちゃんのファンは
たくさんいたのよ。
お母さんもそのファンの一人よ」
小百合の話をした時の夏海は、
男役スターに憧れる
ファンの顔になっていた。
「なになに、あたしも仲間に入れて」
「お姉ちゃん、おかえり」
姉の雅子が学校から帰ってきた。
雅子は、小百合のアルバムを開いて
小百合の写真を見ていた。
「おばあちゃん、カッコイイ。
薫の顔立ちは、おばあちゃん譲りだね」
「そうかな?」
「そうだよ。
薫の凛々しいところは、
おばあちゃんに似たんだよ」
「そうね、薫が宝塚に入ったら
おばあちゃん譲りの男役になるわね」
祖母小百合は、夏陽子の芸名で
宝塚で活躍していた。
母夏海は、小百合の熱狂的ファンで
小百合に憧れて宝塚に入った。
夏海の親友である絵梨花先生も
小百合に憧れていた1人であった。
「実はね、絵梨花も
おばあちゃんのファンだったの。
おばあちゃんの舞台を見た時に
意気投合して一緒に楽屋待ちをしたわ」
夏海が宝塚音楽学校を受けたのは、
小百合に憧れたのはもちろんだが、
自分の人生を変えたいと思ったのだ。
「お母さんのターニングポイントは、
おばあちゃんに出会ったからなの。
おばあちゃんには感謝だわ」
「おばあちゃん、あたしと薫を
かわいがってくれたよね。
あたしたちの小さい頃は、
躾けに厳しくてケンカをしたら
いつも怒られていたな」
「そうね、おばあちゃんは
礼節を重んじる人だったわ。
雅子にも薫にも礼儀作法を
厳しく教えていったわね」
小百合は、孫の雅子と薫に
女性としての礼儀作法を
厳しく躾けていった。
そのおかげで雅子と薫は、
礼節を重んじる女性となった。
それは夏海も同じ考えだった。
憧れのスターだった小百合が
義母として家族となったことは
夏海にとって幸せであった。
「うちの息子と結婚を前提に
お付き合いできないかしら?
お返事はゆっくり決めていいわよ。
あなたがトップスターとなるまで
息子は待っていると言っているの」
小百合は夏海にトップスターとなる
素質があると判断していた。
小百合の約束通り、
夏海はトップスターとなって
宝塚歌劇団に君臨した。
やがて、トップスターとなって
3年後に夏海は宝塚を退団して
幸四郎と結婚した。
幸四郎と結婚したことで
小百合とは義理となるが母娘となった。
「おばあちゃんのおかげで
お父さんに出会えて結婚した。
そして、あなたたちが生まれて
家族で幸せをもらえたわ。
薫、近い将来母娘三代で
宝塚の舞台に立つのも遠くないわ。
頑張って音楽学校に行くのよ」
夏海の強い言葉に薫は、
必ず音楽学校に合格することを
心に誓っていた。
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