試験って難しい

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試験って難しい

薫は、宝塚音楽学校の願書に 必要事項を書いて 郵便ポストに投函していた。 そこまではよかった。 薫は、いつものように部活を終えて 学校から帰ってきていた。 そこで、帰宅が早かった雅子が 薫に入学の願書を出したかと聞いてきた。 薫は、雅子に今朝学校に行く時に ポストに投函したと返事をした。 この時に雅子は薫に言った。 「薫、これから入学試験まで特訓だよ」 「お姉ちゃん、どこに行くの?」 この時、雅子は薫を車に乗せて 宝塚音楽学校を受けるための 教室に連れて来ていた。 「薫、部活が終わったら まっすぐ教室に行きなさい。 入学願書を出した時から 宝塚音楽学校の試験は 始まっているんだからね」 雅子は、薫が宝塚音楽学校を受けることを 両親に伝えていた。 両親は、薫のコンプレックスが プラス思考に変わるならと受験を許したのだ。 雅子は、宝塚に行くことは 薫だけではなく、家族の協力がなければ 合格は成し遂げられないと薫の代わりに 両親に薫の受験を許してほしいと言った。 薫の母は、かつて宝塚歌劇団で 男役で活躍していた。 そして薫は、姉の雅子と違って 自分の背丈にコンプレクッスを 持っていたことから、 雅子に背中を押される形で 宝塚音楽学校を受けようとしていた。 そして、初めて宝塚音楽学校を 受けるための教室に薫は入ろうとした。 教室のなかでは、中学3年から 高校3年になる女の子たちが それぞれレッスンを受けていた。 「こんばんは、はじめまして」 「こ、こんばんは」 「話は、あなたのお母様 夏海さんから聞いているわ。 背の高さにコンプレックスを持っているから プラス思考に変えてほしいと言ったの」 「あのっ、母を知っているのですか?」 「あなたのお母様は、私の同期生よ。 あなたのお母様夏海さんは、 宝塚時代はカッコイイ男役だったのよ。 これからは、私が夏海さんの代わりに あなたを育てていくわ。 音楽学校に合格できるように力になるわ」 この教室を主宰している藍沢絵梨花は、 薫の母と同期生であった。 薫の母夏海は、宝塚時代は大島愛海で 大劇場の舞台に立っていた。 この教室を雅子に薫を連れていくように 言ったのも夏海であった。 「今日は、教室の雰囲気に 慣れていくために見学をしなさい。 明日からは、毎日学校の帰りに レッスンを受けなさい」 絵梨花との出会いで薫は、 夢に近づいていることを感じていた。 これから、同期生となるかもしれない 仲間との出会いが薫を待っていた。 そして、これからが薫自身の戦いが 始まろうとしていた。
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