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タカラジェンヌ時代のアルバム
ある日、薫は古いアルバムを
母の夏海と一緒に見ていた。
そのアルバムは、夏海が
宝塚でタカラジェンヌとして
トップスターとなった時のものだった。
「懐かしいわ。
この写真はね、絵梨花とバンビーズで
活動していた時のものなの」
「バンビーズってなに?」
「当時歌劇団でテレビ中継があったの。
その番組に研1だった同期と一緒に
バックダンサーとして活動していたの」
アルバムの写真は、バンビーズだった
夏海と絵梨花先生がバンビーズとなった
同期生と一緒に仲良く写っていた。
「お母さんも背が高かったんだ」
「そうよ、薫と同じだったのよ。
お母さんが宝塚歌劇団に入ったのは、
おばあちゃんの舞台を見たからなの」
夏海の義母、薫の祖母である小百合は、
宝塚歌劇団で活躍していた
男役トップスターであった。
夏海が宝塚歌劇団に入った頃は、
小百合は宝塚歌劇団を退団して
家庭に入った時だった。
小百合と夏海の出会いは、
夏海が研5の時だった。
この時の小百合は、息子の幸四郎と
夏海の舞台を見に来ていた。
「この時にね、おばあちゃんを
舞台演出の先生から紹介されたの。
小百合さん、おばあちゃんから
声をかけられた時は嬉しかったわ。
お母さんは、おばあちゃんに憧れて
宝塚に入ったんだから」
「おばあちゃん、空の上から見てくれるよね」
「そうね、きっと見守っているわ」
「おばあちゃん、私も宝塚に行くよ」
そう言った薫は、仏壇に手をあわせていた。
小百合は、きっと空の上から
孫である薫を見守るだろう。
やがて、母娘3代で
宝塚歌劇団に入るのも近いだろう。
薫は、小百合の遺影に宝塚音楽学校に
合格することを誓うのだった。
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