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私は肩に掛けていたバッグを斜めがけにし、苦笑しながら手を差し出した。
よろけつつも、何とか支えて立ち上がらせる。立たせてみると、思ったよりも上背があった。
ちょっと猫背気味でこれってことは、180くらいはあるのかな。
(あ……)
一緒に歩き出し、ふと思い出したように背後を振り返る。
だけどそこにはもう、さっき見た黒猫の姿はどこにもなかった。
「家どこ?」
通りに出ると、タクシーのことを考えながら、当たり前のように問いかける。すると彼はなんだか妙に楽しげに、だけどどこか寂しそうに、「今日は帰れない」と言った。
私はそのまま彼を自宅に連れて帰った。
だってそんな表情をされたら、突き放せない。
幸い、明日からはリフレッシュ休暇で三連休。
彼氏と別れて一月ほどだった私の家には、男物の服がまだ少し残っていた。
だからと言うわけじゃないけど、ちょうどいいとも思った。
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