■ プロローグ

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

■ プロローグ

いつからだろうか。降り続いたまま止まぬ雨は、僕の心を見事なまでに隠している。  どうやって死のうか。  何をすればこの苦しみから逃れられるのか。 そんな考えばかりが頭を巡る。 この悲しみが癒える日がくるのであろうか。それは時間が解決してくれるのであろうか。 こうして僕は何気ないことを少しづつ忘れていってしまうのだろうか。 こうして僕の中が空っぽになってしまうのか。 こうして悩んでいることさえ忘れてしまうのか 同じことの繰り返される毎日、ただ何事もなかったかのように時間だけは残酷にも過ぎ去っていく。 一生、この降り止まぬ雨に濡れながら生きていかなければいけないのか。 すべてを忘れて楽になりたいのか?  このままじゃいけないと頭では分かっていても、どうしても前を向くことができない。顔を上げることさえ。気が付けばまた死について考えている。 僕にとって彼女は生きる希望だった。僕のすべてだった。僕の描く未来には、いつも同じこの場所でキミが笑っている。その笑顔とずっと一緒に寄り添っていたかった。 僕へと触れてくれたその手は、とても優しくて愛おしかった。 キミのいないこの世界、昨日と同じ景色を見ているはずなのに、今はすべてが違って見える。 愛するキミへ、過ごしてきた日々の一つ一つにまた終わりを告げなくてはいけません。   ―――もう生きていることがどうでもよくなってしまった。死を考えることでさえ…。    
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!