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「僕は」
肩が触れるくらいの距離に並んで、友達と一緒になって下を眺める。
「病気になってしまったんだ。わりと早いうちに」
「そうだったのか……それも、辛いな」
「うん。苦しかったけど、もう解放されたからいいんだ。それよりも、一緒にいた家族のほうが辛かっただろうし、きっと、今も辛い」
僕は、思い出していた。
身体からエネルギーをすべて吸い取っていくような、痛くて冷たい注射。喉に引っかかって、そのたびに吐いてしまう、大きくて苦い薬。
もうやめて、と泣きながら訴える僕を、家族は、やっぱり涙を流して見つめていた。ごめんね、ごめんね、と繰り返した。
だから、僕も、ごめんね、病気になんかなってごめんね、と繰り返した。
「お前の病気を治したくて、必死だったんだ。愛されていたんだな」
「うん。とても嬉しかったよ。僕も愛していた。とても」
病気の苦しさより、たっぷりの愛情に最期まで添い遂げられなかったことが悔しくて、申し訳なくて、辛い。思い返すと、いつでも涙がこぼれる。
「だからね、僕は、できれば、もう一度あの家族のところに戻りたい」
今度こそ、この命がまっとうされる瞬間まで、一緒にいたい。
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