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上司の心遣いに感謝
それは、寛子の担当医からの
説明を聞いた直後であった。
武志の携帯に電話がかかってきたのは…。
電話の相手は、出張先である
福岡センターのセンター長からであった。
そう、武志の仕事はコールセンター業務の
管理を担当していた。
武志がいるコールセンターは、
大村市にあった。
そして、寛子が働いている
コールセンターは島原市にある。
「松島くん、奥さんの事故だけど
九州のニュースで
大きく取り上げられていたよ。
奥さんは、どうなんだ?」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。
家内ですが、ケガが思ったよりひどくて
入院加療の必要ありと診断されました。
1週間後に手術をすることになりました」
「それは、大変だったね。
たった今、私のほうから
大村センターに連絡を入れた。
まもなくしたら、大村センターの
センター長である植村さんと
管理長の山岡さんが訪ねると
言ってきている。
植村さんか山岡さんのどちらかが
キミに連絡を入れる。
その時に入院が決まった病院を
教えておいてくれないか」
「わかりました。
ご配慮をいただきありがとうございます」
「奥さんが1日も早く
良くなってくれることを祈っているよ」
福岡センターのセンター長からの電話と
入れ替わりに武志が担当している
コールセンター業務の管理長である
山岡寛から電話が入った。
「もしもし?」
「武志、奥さんの事故のことは
福岡センターの朝倉センター長からの
連絡で聞いた。
これから、センター長と一緒に
病院に行くつもりでいるが
どこの病院か教えてくれないか?」
「ご心配をいただき
ありがとうございます。
家内は、長崎医療センターに
入院することになりました」
「長崎医療センターだな。
わかった。
センター長と一緒にこれから病院に向かう。
武志、これから奥さんが歩くまで
時間が必要になってくる。
何か苦しいことがあったら、
いつでも私に話してくれ。
私が力になれるなら、いつでも助けていく」
「ありがとうございます、管理長。
温かいご配慮に感謝します」
最初は、夫婦で同じ島原センターで
勤務をしていたのだが
武志は、オペレーター業務を
管理をする業務に就くため、
正社員としての道を選んだ。
そして、武志と寛子が
夫婦で働いていたことは、
他のオペレーターはもちろんであるが、
管理業務を行う正社員たちの
暗黙の了解としていたのだ。
それは、武志と寛子が業務は違っても
一生懸命にこなしていくという
目標にしていたことが、
センター長や管理業務を行う正社員たちと
オペレーター仲間たちが
武志と寛子を認めていったのだ。
やがて、武志は管理業務を行う
正社員となり大村センターで
仕事をしていくまでになっていた。
そして、武志は大村センターで
管理業務を行う正社員とオペレーターから
信頼をされるまでになっていた。
それは、武志の人懐こい性格が
功を奏したのだろう。
こうして、センター長と管理長が
自分の妻のために見舞いに
来てくれることに感謝していた。
この時、寛子は手術前なので
個室に入っていた。
寛子は、手術前は絶食なので
点滴治療を行っていた。
武志は、背中の痛みで寝返りが打てない
寛子が痛々しく感じていた。
「武志、奥さんの様子はどうだ?」
「管理長、センター長、私のことで
ご心配をおかけして申し訳ございません」
「これは、非常事態だから
気にすることはない。
福岡センターの朝倉センター長から
連絡をもらった時は驚いたぞ。
キミの奥さん寛子さんは、島原センターで
即戦力になっているオペレーターだ。
その奥さんが、職場の帰りとはいえ
事故に遭ったんだ。
これは、ただ事ではないと思って
私とセンター長で
病院に行くことにしたんだ」
「武志くん、キミと寛子さんの頑張りは、
私が島原センターにいた時代から
見てきたんだ。
そんなキミたちが非常事態になっているのを黙って見過ごすことはできなくて、
山岡くんと同行させてもらったんだよ」
武志は、自分の妻が事故に遭ったことで
心が砕けそうなっていた。
それを山岡管理長と植村センター長は、
わかっていたのだろう。
武志は、人情に厚いだけに
心が砕けることがあることを…。
寛子が病室で眠っていたのが功を奏したのか武志は、山岡管理長と植村センター長の前で
涙を流していた。
そんな武志の姿を見て山岡管理長は言った。
「武志、泣きたいと思うなら
思いっきり泣け。
これから、苦しい戦いが待っているんだ。
寛子さんが、歩くまでに時間がかかる。
これからが、寛子さんの戦いが始まるんだ。
武志、これから戦う
寛子さんの力になっていけ」
山岡管理長の言葉に自分の心が
砕けていた武志は涙を流していた。
妻である寛子が、意識が戻ったとはいえ
これからが、大きな戦いとなる。
涙を流すのに終わりはない。
今は、自分の苦しい胸の内を聞いて
心を軽くしてくれた山岡管理長と
植村センター長に武志は感謝していた。
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