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東京から沖縄より、沖縄から東京へのほうがかかる時間が短いのだと彼女は言った。
「どうして? 同じだと思うけど」
同じ区間を行き来するのに違いがあるのはおかしくないだろうか。
首をかしげた僕に、「よく知らないけど、風とか空路の関係かな」と彼女は言った。
空の上にも通るルートがあるのだと、僕はそこでやっと思い至る。
2時間47分かけて飛んできたのに、沖縄で彼女と過ごせる時間は丸3日にも満たない。
帰りのときを迎えると、僕は毎回泣いてしまう。情けないことだ。そんな僕を見て彼女は「泣かないで」と寂しそうに笑うのに。
寂しさは彼女と別れるそのときと、飛行機が飛び立つときに現実となり迫ってきて、羽田に到着するまでまでその寂しさは続く。
でも帰りのほうが短い時間で帰れるから。
寂しい気持ちを味わうのは少しでも短いほうがいい。
空港からモノレールに乗る頃になって、気持ちはようやく日常に戻ってこられるのだ。
今回、帰りのフライトは2時間12分。
いつか2時間47分の距離が縮まりますように。
数字の上の1時間や1分の単位ではなく、もっと、もっと、限りなくゼロへ。
ゼロになれるときがきたならば、今度は僕と彼女と。
同じ時間と距離を共有して、青緑の海を見に行こう。
(完)
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