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頭蓋骨を抱えた彼女は
少しだけ幼い顔立ちをした少女が立っていた。
川を眺めながら、小さく歌を口ずさんでいる。
……その光景だけなら可愛らしく映るだろう。
──彼女が、両手に頭蓋骨を抱えていなければ。
「ああ、まただよ。今日もあそこにいるのか……」
薄くなった髪を撫でながら初老の男性が呟いた。
「……そうだな。毎日だ。歌いながら頭蓋骨を抱えて歩くんだ」
無精髭を生やした吊り目の男が答える。
「あの子は狂ってしまったのさ」
「可哀想に……」
「見ろよ、年頃の娘が虚ろな目で頭骸骨を抱えているんだからな。まったく、不気味で仕方がないぜ……」
寒気がしたように、無精髭の男は身を震わせた。
「釣田君、そう言いながらきみは毎日来てるではないですか」
穏やかな瞳で、無精髭を撫でる釣田を見つめる。
「……そういう本間さんだって毎日来てるくせに」
ぶすっとした顔で本間を睨む。
「そうだね。……私は、お嬢様が心配なのさ」
「……オレだって同じだよ。あの子は、客もろくに来ないオレの花屋に毎日来ては店を手伝ったり話し相手をしてくれたりしたもんさ。そんで、毎日花を買っていってくれた」
虚ろな目をして歩く少女を見つめる釣田の顔は険しい。
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