僕と彼女と黄色のアレ

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 朝がきた。朝日が差し込み小鳥はさえずる、普段と何一つ変わらない爽やかな土曜の朝だ。いつもより遅く起きて、コーヒーを飲みながら彼女とたわいのない話をする。そうやって、二人でゆっくりと過ごすこの時間のために僕は生きていると言っても過言ではない。  「ねぇ、酢豚という料理の中にパイナップルを入れることを思いついた人は天才だと思わない?」  確か、始まりはそんな感じだったと思う。いきなり酢豚の話を始めたのは彼女の方だ。  「いや、僕は好きじゃないなぁ。あの豚肉とパイナップルを一緒に食べるというのがどうにも駄目なんだよ」  僕は酢豚のパイナップルが苦手なので素直にそう答えた。パイナップル自体はむしろ好きなのだが、料理の中に果物を入れるとなると話は別だ。とはいえ、食べ物の好みは人それぞれ。とりわけ熱くなるような話題ではないはずなのだが。  「何よそれ!?酢豚を食べるのにパイナップルを食べないの?あんなにおいしいのに?」  彼女はまるで信じられないものでも見るかのような目で僕を見た。なにもそんな珍獣扱いしなくてもいいと思う。さらに彼女はヒステリックにこう付け加えた。  「ありえないわ。豚肉は食べてもパイナップルをよけるだなんて!あなた本当に人間なの?」  それなら今君が酢豚のパイナップルの重要性について説いている相手は新種のクリーチャーか何かなのだろうか。いや彼女にとってはそうなのかもしれない。とりあえず、落ち着いてほしい。
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