屋上のドラマ

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そしてやっと夏海はセリフを言い放った。 やがて航太がポーションで目を潰されたシーンになった。彼はここで終わらせたいので、本気でやってみた。 「うわあああああ!熱い?焼けるようだ……」 あまりの名演技に、宗介はまだ続けるように指示を出した。航太はこれに応えるように目を押さえてよろよろと歩いた。 「ぐわああ?俺が、俺が何をしたというのだ?……俺だって好きでこうなったわけではないのに……」 航太の会心のアドリブは、ヒロイン役の夏海の心に響き、彼女の心を引っ張っていった。 そしてラストのシーンで、屋上のフエンスで2人がもみ合ったシーンでカットになった。 「カット!いやーすごいよ」 「はあ、はあ、はあ。このままラストに行こう」 本当にいよいよ最後として夏海はフェンス側で航太人形と揉み合ってそして、この人形を地面へ落とすシーンになった。 「オッケーだよ」 「いきますよ。アクション!」 「や、やめて!うう、ああ?きゃあーーーー!」 夏海に落とされた航太人形は、地面まで真っ逆さまに落ちて、そしてぶっ壊れていた。 「……はい、オッケーです。おつかれさまでした」 「おい?俺が死んでそれで終わりかよ」 「もういいから、帰ろうよ」 こうして3人は片付けて学校を後にした。 映画は宗介が編集したいとうるさいので二人は任せ、家路についたのだった。 そんな翌日。 隣のクラスの夏海の様子がおかしくなっていた。 「おい、どうした。目の下にくまなんか作って」 「航太か。別に良いでしょう。放っておいてよ」 その時航太はクラスの女子に呼ばれたので、夏海は行ってあげなよと言い、渡り廊下を走っていった。 この日から、航太は学校で夏海に会えなくなっていた。 航太はこれを宗介に相談した。 「もしかして。夏海さんは……吸血鬼になったのかもしれませんね」 「はあ?」 つづく
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