三度目の人生は異世界の公爵令嬢

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 元々日本人だった私の人生は波乱にとんでいた。  高校を卒業する直前にナライアという異世界に『勇者』として召喚され、何だかんだで『魔王』を倒した。  魔王を倒せば日本に帰れるという考えは最初からなかった。召喚された際に帰す事はできないと聞いたから。  でも、ほんのちょびっと帰れるかもしれないとは心のどこかで思っていたのも事実で、だから各国の王様から魔王討伐の報酬は何が良いかと聞かれた時に『異世界勇者召喚』の破棄を願った。研究する事も禁止してもらった。  散々帰る方法を探した結果、やっぱり帰ることはできなくて。だったら私みたいな人をこれ以上出さないために。そして未練を断ち切るために。  実は異世界から簡単に戦力を召喚できるなら破棄なんてしてくれないかと思って根回しもしていたがあっさりしたものだった。  当然、手を貸してくれた仲間には感謝しかない。 だから『異世界勇者召喚』は研究する事も禁忌に指定され、全ての資料が破棄された。これらにどういう裏事情があるかは私にはわからなかったが、同じ様な思いをする人が出ない事にホッとした。というかそう思っていないとやってられない。  各国から自国に来ないかと色々優遇措置を聞いたが、貴族とか私には無理。話しのわかる知り合い、ぶっちゃけ貴族や王族、権力者とは魔王討伐の旅の中で事件を解決したりで伝手があるので、もしもの場合は依頼を受けるという約束の元、物語に良くある『冒険者ギルド』の『冒険者』として相棒のドラゴンと旅に出る事にした。  まあ、冒険者ギルドとか冒険者というワードは自動で翻訳されて聞きとれるので実際は違う言い方何だろうけど。  このナライアという世界は剣と魔法のファンタジー世界なのは勇者とか魔王ってワードでわかると思うけどステータスとスキルというものがある。  ステータスに関してはゲームとかにある詳細にあるものではなく、『総合戦闘力』という力とか速さとか魔力とか全部合わせたモノがあるだけ。 しかもこの数値、訓練すればポンポン上がる。 私の場合勇者だから最初から高いし上がる幅も多いから余計そう思ったんだけど、この世界の人も結構上がる。 才能のありなしもあるけど、結果的に訓練していけば産まれた当時の1000倍ぐらいの数値に到達する事も可能。  結局のところ最初の人生で結婚する事なかった。  ちょっと良いなと思う人はいれど私の事を『勇者』『最強人類』など、尊敬または畏怖の対象でしかなかったからだ。  私も途中から『私自身を見てもらう』という努力を放棄したから他人のせいにはできないけど。  ありのままの私を見てくれる人もいた。でも、精神がイケメン過ぎたりして既にお相手がいる人ばかりだったから恋愛対象にはならなかった。おもに私が。  そんなこんなで晩年は弟子なんかを取ってみて穏やかな最後を迎えられたと思う。  もし、魂だけでも日本に帰れるのなら両親に謝っていっぱいありがとうを言いたいな、と眠りについた。
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