予感

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――――  やわらかな風が吹く。幻影水鏡橋の上で彼を待つ。 「美里、お待たせ」 名前を呼ばれて振り返る。ラフなTシャツにジーンズ。いつもの配達中の浩哉の姿。 「遅刻よ、浩哉」 私を見て浩哉が笑ってる。彼の笑顔に嬉しさが込み上げる。  浩哉が倒れた後―― 『結婚はできません』 真司にはとても申し訳ない事をした。だけど、正直な想いを話したら理解をしてくれた。 『幸せになれよ、きっと』 本当に大好きだった。迷いなんて無いと思っていたけれど。 『さよなら、美里』 失いたくないと願ったのは―― 浩哉だった。 「……っつ!」 浩哉が顔を歪める。手術後の痛みがまだあるのだろうか。 「大丈夫? 痛むの!?」 顔を覗き込む。脳外科の手術を受けたばかりで私は不安になる。浩哉はゆっくりと顔を上げて穏やかに微笑む。 「美里、おいで」 ちょっと照れた様に。はにかんだ表情をしながら両腕が広がる。  浩哉のあたたかな胸に包まれて、やっと安心ができる。
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