予感

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「お願い、少しだけ時間を頂戴」 『あの橋の上で待ってる』 真司のところに行きたい。逢いたくて、ふれたくて、想いが募る。 「母さん、少し出て来るわ」 やわらかな風に吹かれながら幻影水鏡橋の方へ歩く。真司が待っていると思うだけで心が焦り出す。  橋の上はまだ誰の姿も見えない。山を越えて車で向かって来ると言っていた。川の向こう側をずっと眺めていた。 「美里、まだいたのか」 「浩哉…… 配達は終わったの?」 酒屋のエプロンを外した格好で浩哉が歩いて来る。さっきの様な誤解を招かない様に、手摺から身体を離して浩哉と向き合った。 「人と待ち合わせなの」  浩哉の表情が一瞬曇る。上がりかけた手が迷うように宙を掴んでまた下ろされる。 「浩哉……!?」  真っ直ぐに私を見つめる浩哉の瞳が大きく揺れて。手首を掴まれて浩哉の胸に引き寄せられる。
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