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迷いなんて無い。そう思っていた。
商店街を歩く。幼い頃から親しんで来た風景に少し寂しさを覚える。
「なんだか…… 騒がしい?」
人のざわめきが聞こえてくる。商売の掛け声とは違う、緊迫した叫び声が入り交じる。
浩哉のお店の方から――?
無意識に駆け出していた。人混みを掻き分けて浩哉のお店の入口まで走り寄る。
「浩哉――!?」
ガラス扉の前、倒れ込んでいる浩哉の姿。
「救急車はまだか!?」
「おやっさん、浩哉を動かすなよ」
取り囲む人達の声があちこちから飛び交う。
「おじさん、浩哉はどうしたの」
声が震える。浩哉に駆け寄り地面に膝を付く。倒れ込んでいる浩哉の頭を膝にのせて頬に手を触れる。
「わかんねぇ、急に倒れたきりなんだ」
意識が無い。何度頬を触っても浩哉の目が開かない。
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