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病院の処置室に浩哉が運び込まれる。通路に置かれた長椅子に腰を掛けて診察が終わるのを待つ。
幾度深呼吸をしても落ち着かない。握りしめた指が震えて唇が乾く。
「美里ちゃん、浩哉は!?」
後を追いかけて来た浩哉の父が、病状説明の為に処置室の中に呼ばれたあと、移動ベッドに寝かされたまま浩哉が部屋から出て来る。
「このまま入院になります」
まだ意識が戻っていない。閉じられたままの瞳に不安ばかりが私を襲う。
看護士に付き添われ、病室へ向かう浩哉の後を追い、窓際のベッドに寝かされた浩哉の枕元で、彼の顔を見つめていた。
『行くなよ』
浩哉がそう言ったんだよ。早く目を開けてよ。
『俺といろよ、ずっと』
いなくならないで―― お願い。
涙がぽろぽろと零れ落ちていく。浩哉の指を祈る様な想いで握りしめていた。
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