どん底

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どん底

「ねえ、パチンコばっか行かないで少しは仕事してよ!」 「アホか! どんだけ寝ずに仕事しても赤字続きじゃねーか! パチンコで儲けた方が効率いいんだよ」 「じゃあその儲けた分、少しは家に入れてよ!」 「勝手な事ばっか言ってんじゃねーよ。 今日は連れと約束あるから遅くなる」 文句を言うと帰って来なくなる。 こんな毎日。 とっとと別れてやろうと思いながら、子供の事を考えると、やはり躊躇してしまう。 息子はまだ5歳。 時々遊んでくれる父親の事はやはり好きなんだ。 滅多に遊んではくれないけれど。 国庫や銀行、はたまたキャッシングまで、借金は膨れ上がる一方。 数千万の借金を抱えて、私一人が働いて何とか生きている。 なんとかなる。まだ、方法ならある。そう思い込むことで頑張れた。 実際に儲かった時期もある。まだ2、3年前の話。 あの時のように効率よく回すことができたなら、きっと復活できる。 そんな希望的観測。 けれど、 夫がしていた力仕事も全て私がしなければいけない。 毎晩、体が悲鳴を上げる。 腕がパンパンになり、脚は浮腫んで。 夜寝るのも目が限界になってから、ソファーで2時間ほど。 ベッドで眠ってしまうと熟睡してしまいそうで、納期に間に合わなくなるかもしれない事が怖くて、暖かい布団で眠ることができない。 このまま死んじゃうかもしれない。 どこかでそんな恐怖も抱えていた・・・
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