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「最近、なんか疲れてる?」
職場の休憩中に突然同僚の佐々木 舞子に心配そうな眼差しで話し掛けられる
「えっ、いや別に」
「それなら良いけど」
「なんでそう思ったんですか?」
「なんか、ここ数日いつも以上に元気ないから」
舞子からの指摘にやっぱり分かる人には分かるのかな。と心の中で苦笑いを浮かべながら、至っていつも通りですよ。と笑って見せると良かった。と言って食べる手を止めていたのを再開する
「……ただ、最近道端でたまたま定期入れを拾って、それを交番に届けてたんです」
「おー、そんな事あるんだ」
「それで無事に持ち主見つかったんですけどね」
「それは良かった、でもなんでその話を私に?」
不思議そうに聞き返してきた舞子に人に親切にするって疲れるんだなって思いましたと答えるとあー、元気がない原因はそれか。と相槌を打つ
「でも良いことは自分にも返ってくるって言うし」
「そうなんですか?」
良いことなんてあるわけがない。そんな事も言えるはずもなく、詩織は苦笑いを浮かべる
しかし、ふと詩織は何故か淳史の顔を思い出す
(なんであの人の顔を……)
詩織は疑問に抱きながら首を傾げていると舞子があーそうそうと一冊の雑誌を見せてきた。
その雑誌の表紙は今詩織が思い出していた淳史が表紙になっていて、おもわず声が出そうになり、舞子に気付かれないように口元を抑える
「……この雑誌は?」
「同じの間違って買っちゃってもし興味あるなら差し上げようと思いまして」
「えっ、なんで私なんかに?」
舞子がすぐさまそれっと指摘してくる
舞子からの指摘にえっ?と聞き返すと自分に自信無さすぎと一言
「大丈夫、少しぐらい自分に自信持っても」
「突然どうしたんですか?」
「まだ若いの、まだ二十代なんだから」
舞子の言葉に詩織は、冴えない表情を浮かべる
「……もう良いんです」
「またそんな事言っ──」
「今で十分楽しいんです」
そう言って舞子に微笑んだ詩織は、雑誌を受け取り、せっかくなので貰っときます。と自分のロッカーを開けると雑誌を仕舞う
もうすぐ休憩終わるので先に行きます。と詩織は休憩室を出ていく
休憩室を出ていく詩織を見送った舞子は、なんでこうも自分に自信持たない子になっちゃったのかねぇと心配そうな口振りで呟いて、休憩室に掛けられている壁時計の時間を確認して舞子も出ていった。
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