3 いつもと変わらない日常が少しだけ変わる気配がした

2/2
前へ
/15ページ
次へ
「……なんか意外」  詩織は、メッセージアプリに送られてきたウサギのようなキャラクターのスタンプを見ながら、ふとそんな呟きを溢す  ──すみません。間違いないです。  ──でも勝手に話してしまって    気悪くしてしまったなら謝ります  ──わざわざご報告ありがとうございます。  スタンプの前に返ってきたメッセージの中でも使われていたスタンプに無意識に笑みが溢れる (あれっ? 私、なんでこんなに自然に笑えてるんだろう……)  プライベートで笑うことを忘れかけていた詩織は、眺めすぎて画面が真っ暗になった時に写り込んだ自分の表情を見て、驚きを隠せなかった。 (やっぱり私が想像していたような人じゃないんだ……) 「また既読にしちゃった……」 (また返さないと失礼になるよな……)  一言だけでも返さないといけないとスマホを手に返事の内容に悩んで、頭を抱え始めた。  ──怒ってはいないので気にしないで下さい  使ったことなかった熊のようなイラストのスタンプで大丈夫です。と緊張した面持ちで送る (ついにスタンプを使うときが来てしまった……)  送った後に後悔するも既に遅く、ただ送った事が正解なのか自分でも分かっていなかった。  しかし、詩織にはこの悩みを誰かに相談する相手もおらず、ただ一人で悶々とする事しか出来なかった。 (最初からこうなる事ぐらい予想出来たはずなのに……)  今更過ぎる後悔を抱きながら、スマホの画面を真っ暗にしようとした瞬間に画面が明るくなってメッセージが届いたことを告げられる (なんでこんなに早く返信が来るの!?)  相手からの返信の早さに驚きながらも素直にもう見るのをやめようとしていたメッセージアプリをもう一度開いた。  ──わざわざ連絡ありがとうございます  ──今日久しぶりにオフだったんです  送られてきた内容があまりにも普通でまた自然と笑みを浮かべていた。  するとまたメッセージが送られてきた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加