*投了*

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*投了*

「ありません・・」 静かな和室に部長の声が一声響く。 「はい。では勝者、友坂高校。そして最川高校の敗退となりました」 『予選リーグ敗退。この試合に勝てばリーグ戦にいけた。三年生を、部長を、全国に・・・』 俺は拳を強く握った。 先輩たちが一礼して対戦室を出る。俺達は別室のモニターで対戦を見ていた。 「負けちゃったよ。相手、強かったね」 少し残念そうな笑顔で先輩たちが帰って来る。 「先輩―!」 俺は先輩にかけよる。 「おお、どうした大磯」 部長は驚いて俺の肩をつかむ。 「俺たちが戦力になれないから」 「そんなことはないさ。現に部長の俺が負けているからな。大磯は有望だから、来年は俺達の分もって・・・おい泣くなよ」 高校将棋選手権大会で先輩たちの夏は将棋から受験に替わる。 「今日はお疲れ様でしたー」 会場から一緒に帰っていた部員が、一人また一人と道が分かれて、俺と部長だけになった。 二人でゆっくりと歩きながら、 「なあ大磯、俺は次の部長にお前を推すよ」 突然の部長の発言だった。 「え・・・なんで」 「お前、一生懸命だし、負けず嫌いだし、面白い打ち方するし、伸びしろあるよ」 「そんな、俺部長の背中見てきただけで」 「そっか、サンキューな」 部長の手が俺の頭を軽くなでる。 俺は我慢が出来なくなって部長の腕に抱きついた。 涙がにじむ。 「おい、そんなに悔しかったか?」 『わからない。負けて悔しいのか、もう部長とは会えずに将棋を指していくのか』
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