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「そうどっしゃろ? 実はな、『キジの雄みたいな立派な殿方たちがよーけ舞い込んで来はるように』っちゅう願いが込められてはんのどす。な、面白いやろ?」
なんと、そんなあざとい理由であったなんて。
「なるほど……、よく考えついたものですね。でもそれを知ると、たしかに珍しい気もしますし面白いですね」
いっそのこと堂々と家紋の由来を公表して、あざとく営業をするというのも手であると思うが。
「ほんで、葵の元へ舞い込んで来はったっちゅうわけやね」
「え……?」
涼子の言葉に思わず聞き返してしまった。葵の元へ、キジの雄みたいな立派な殿方が舞い込んできたというのか。それは一体、誰なのか。
「え、やないし……なんでわからへんのかが、わからへんわ」
葵に呆れた視線を向けられ、戸惑った。
「そんなこと言ったって…――え、もしかして、おれ……?」
「そら、そうやろ。他に、誰がおんねん!」
鈍すぎると言うように、葵が呆れた視線を向けてきた。
「まあまあ、葵ったら。ほんまは、そないなところも好きなくせに」
流石に自分でも鈍感であったと肩を落とすおれを見た涼子が、笑いながら葵を揶揄った。
「……っ、知らんし」
「えっ、そんな……」
好きだと言ってもらえずショックを受けていると、葵が躊躇いがちに口を開いた。
「……そんなん、一々言わんでもわかるやん……。ぜんぶ好きやし……」
消え入るような声で可愛いことを言ってくれた葵に一々ときめいていると、おれたちのやり取りを見ていた涼子がやれやれと言った風に笑っていた。
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