双葉葵

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「―――よお、元気そうだな」  約束の時間に宇田屋に向かうと、門の前で成田が煙草を吸っていた。 「どうも、成田さんも相変わらずですね」 「まあな。おまえの方は、ちょっと変わったんじゃないのか? 前よりも男度が上がったように見えなくもないが、それも葵のお陰だな」  そこは上がったと断言してもらいたいところなのだが。 「まあ、成田さんほどではないですけど」 「そりゃ、そうだろうよ」  相変わらず、嫌味な男だ。だがこの男には散々世話になった手前、嫌味を嫌とは言えまい。  言動すべてが絵になる成田が携帯灰皿に煙草の火を消して捨て入れたとき丁度、剣持がタクシーに乗ってやって来た。 「二人とも、待たせてしまって申し訳ない」 「いえいえ、こちらも丁度着いたばかりでしたので気にしないでください」 「じゃあ、行くとするか」  三人揃ったところで早速、おれたちは宇田屋の中へと入っていった。 「――こんばんはー、失礼します。いやあ、今夜は色男が三人もいはるん? 嬉しいわあ」  座敷で待っていたおれたちの元へ、菊乃を先頭に葵と舞妓たちが中へ上がってきた。 「菊乃も相変わらず、美しいな」 「んもう、成田さんったら。一体、何人に言うてはるんやか」  開始早々、口説き文句を言う成田をあしらうと、菊乃は一目散に剣持の元へとすり寄った。面白くないと不満そんな表情をしていた剣持だったが、隣に菊乃が座るとコロリと表情を変えた。
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