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ダイヤモンドを一周した先頭バッターは、ホームベースをゆっくりと踏み抜いた。
続くバッターがやけに手練れに見えて、ボールが逃げる。
フォアボールに相手の喜ぶ声は大きくなるばかり。それが大津波のように俺に押し寄せて来る。
早くも息が上がった俺の元に、早速『女房』が歩いて来た。
「キンチョーしてんの?」
「他に言うことねえのかよ」
あまりにもあっけらかんと言うもんだから、なんだか腹が立った。お前も少しは緊張しろよ。
「わ、分かるよ! キキキ緊張するよなぁ!」
一塁から寄ってきた菅野が俺以上に緊張しているのを見ると、なんだか落ち着いてきた。あ、西木が落ち着いてるのは、俺を見てるからなのか?
三塁の竹村は俺の背番号の辺りを平手で思い切り打った。
「ゴフ!」
「大丈夫だって! ホームラン以外なら取ってやるから!」
「嫌味か!」
今打たれたんだよ。その「ホームラン」てやつをな!
「ボロクソに打たれたって、俺たちが取ってやるから!」
日焼けした竹村がグラブで促してきた先を見た。
レフト、ショート、センター、セカンド、ライト。
俺の視線の先の野手たちは、大きく手を振って存在をアピールしていた。
一人一人のユニフォームの白が、輝いていた。
眩しい。
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