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「……散れよ」
口から自然と言葉がこぼれた。
「は?」
ポカンとした三人を、ジロリと睨み付ける。
「戻れっつってんだ! いちいち集まって来んな!」
「……はいはい」
吹き出しながら、西木がマスクをかぶってホームベース付近に戻っていく。それを合図に、後の二人も顔を見合わせ、笑ってマウンドを離れていった。
ロージンバックを握り、ポイと放る。
ミットの下に出たサインはやっぱりストレート。俺は力強く頷いた。
相手ベンチの声援。さっきまで恐ろしかったその声は、今では屁でもない。
俺の着てる、このユニフォームよ
この背番号よ
輝け!
気合を全部指先に込め、ミットを目掛けて投げたボール。
真っ直ぐに西木を目掛けて伸びていく。
ドシン!!
聞き慣れた大きな音を立てて、俺のストレートを西木のミットが受け止めた。
「ストラーイクッ!!」
「っしゃ!」
審判の握った拳を見た瞬間、俺は既に勝利を掴んだかのようなガッツポーズを決めた。
スピードガン計測、最高155キロのストレート。
ビビれ!
そう思いながら、バッターを睨みつけた。
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