グラウンドの真ん中で

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よく聞く言葉がある。 マウンドは暑いでしょう。 特に一番高いところで、グラウンドの真ん中で、長時間太陽の光に晒されるピッチャー。 ※※※ 顔から噴き出す汗を拭って、西木のミットを見つめた。 サインはスライダー。 見た目も性格も温厚なのに、バッターとの勝負となったら『駆け引きの鬼』と化す俺の相棒。頼りになって仕方がねえ。 野球は最後のアウトを取るまで、何が起こるか分からないスポーツだ。ツーアウトから試合がひっくり返ることだってよくある。 最後の最後までその可能性を信じているのは、相手も同じ。 それなのに。 一点差。2アウト、ファーストにランナーがいる状況で、外に逃げるスライダーのサインを出す西木はアホだ。 「わぁったよ」 僅かに苦笑いした俺の顔も見えているんだろうか。西木は目標とするところに一瞬だけミットを構えた。 「信じればいいんだろ!」
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