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汗ばんだ右手の中で回した、硬式野球のボール。縫い目に指を引っ掛けながら、遠くで向かい合った相棒のミットの下を見つめた。
あと1アウト。
送られるサインに思わず目を見開く。
おいおい、外に逃げるスライダーかよ。
今、3ボールだぞ、分かってんのか?
おまけに一塁にもランナーがいるのに。
思わず首を横に振った。
すぐさまもう一度送られてくるサイン。同じ球種を要求していた。
ブハッ
吹き出した俺に、キャッチャーの西木はミットを拳で叩き、構えた。
わぁったよ。
信じればいいんだろ!
俺は仕方なく前屈みにしていた体を起こし、グラブの中でボールをスライダーの形に握った。
心臓がドキドキして、胸を突き破ってきそうだ。
緊張して吐きそうだぜ。
でも
クッソ楽しい!
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