ピッチャーだと?!

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時はちょうど一年前。 甲子園への地区予選初戦をボロ負けした翌日のことだった。 「ピッチャー、千葉」 「はあ!?」 新監督の発表に、思わず立ち上がって大声を出した。 周りの視線が一気に集まるが、そんなの気にする余裕もなく、酸素を求めて魚がやるように、口をパクパクさせてしまった。もちろん声なんて出ない。 ピッチャー!? 監督は呆然としている俺を気にも留めずに「キャッチャー西木、ファースト菅野……」と各ポジションの部員を発表している。 俺は取り敢えず、周りに合わせてストンと座った。 なぜ座ってるかって? それは、今日から着任した監督(オニ)に、果てしない全力50メートルダッシュをさせられて、全員立ち上がることもできなかったからだ。 まあ、俺は最後まで生き残って走り続けたけどな。 最後まで発表を終え、監督は新しいポジションに戸惑う俺たちに「ニカッ」と笑った。日焼けした肌な上に逆光で、歯だけ白く見えた。 「明日からはこのポジションで練習するからな。今日はここまで! グラウンド整備してしっかり休めよ!」
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