32人が本棚に入れています
本棚に追加
時はちょうど一年前。
甲子園への地区予選初戦をボロ負けした翌日のことだった。
「ピッチャー、千葉」
「はあ!?」
新監督の発表に、思わず立ち上がって大声を出した。
周りの視線が一気に集まるが、そんなの気にする余裕もなく、酸素を求めて魚がやるように、口をパクパクさせてしまった。もちろん声なんて出ない。
ピッチャー!?
監督は呆然としている俺を気にも留めずに「キャッチャー西木、ファースト菅野……」と各ポジションの部員を発表している。
俺は取り敢えず、周りに合わせてストンと座った。
なぜ座ってるかって?
それは、今日から着任した監督に、果てしない全力50メートルダッシュをさせられて、全員立ち上がることもできなかったからだ。
まあ、俺は最後まで生き残って走り続けたけどな。
最後まで発表を終え、監督は新しいポジションに戸惑う俺たちに「ニカッ」と笑った。日焼けした肌な上に逆光で、歯だけ白く見えた。
「明日からはこのポジションで練習するからな。今日はここまで! グラウンド整備してしっかり休めよ!」
最初のコメントを投稿しよう!