ピッチャーだと?!

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「なんで橘が補欠なんだよ! 納得いかねえ!」 俺も入れた二年生8人は、息巻いた竹村につられるようにいつものラーメン屋の暖簾を潜った。 「らっしゃい!」 「バリカタ8杯!」 「アイヨッ!」 勝手に注文する竹村に、柏田と平原がブツブツ文句を言っている。竹村は弱小ながらも一緒にやってきた、同学年の橘がレギュラーを外されたのに腹を立てて噴火してる。 俺はバリカタでも何でもいいけど……。 すぐに出されたラーメンをジッと見つめた。 もともと俺は外野手。ピッチャーなんてタイプじゃない。橘が立っていた所に自分が立つところを想像するだけでも背中が冷える思いだ。 ーー千葉の目で睨んだら相手もビビるわ。 監督は笑いながら言った。それが冗談なのか本気かは分からない。 目つきが悪いのは生まれつきだっつの。 そんで、このソフトモヒカンはハッタリのため。 俺には無理なんじゃないか。 見た目はヤンキーみたいだと言われるし、名前だって『獅道(しどう)』で、ヤクザかよって突っ込みたくなるけど、見た目に反して俺はビビリだ。 「食わねえの?」 相棒になったキャッチャーの西木の声にハッとした。既に西木の器の中に麺はない。 「あ、ああ、食うけど」 「麺、伸びるぞ」 スープを豪快に飲んで、西木は満足げに息を吐いた。
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