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「明日は応援も来るからなー。一気にやっちゃおう」
「はーい」
ドニさんの古民家は二階に使われている壁材を取っ払い、和室として調和の取れたベンチ付き、自然素材の壁にリフォームする。ここの賃料はご厚意により無料なので我が社からのせめてもの恩返しである。
「夢のハリスリゾートに宿泊出来るー♡マッサージ予約したー♡」
「滑る上に? そんな時間どこに」
「フフン。リフォーム済んだら、俺有休だもーん。この半月死ぬほど働いたもーん。F市と碓氷村、何往復したか」
「……すみません」
藤間さんは俺の頭をワシャワシャ撫で回し、後輩のサポートは先輩の宿命だって笑ってくれた。そして俺の目につかないところで白菜他の掃除と下拵えをし、鍋の準備を着々と進める。
「しゃぶしゃぶですか?」
「由一郎さんが和牛和牛って煩いから。社長が神戸牛3キロ持たせてくれた。余ったら冷凍して暫くは」
「余る訳ないでしょう。由一郎も胃下垂ですよ」
「え」
「それに俺、しゃぶしゃぶよりすき焼きがいいー」
「すき焼き⋯⋯三十路越えるとキツいのよ……胃に来るのよ⋯⋯」
ダイニングは大家族用にテーブルがやたらデカい。が、ここも掘る。天板に赤外線ヒーターを取り付け『掘り炬燵』にリフォームする。
古民家の風情を生かしたかったのであろう事は住んでみてよく理解したが、言ってみればだだっ広い板の間に高級家具を並べただけ。暖房費含めた電気代が嵩んでしょうがない。
俺の部屋には既にポータブル炬燵が設置してあるが、西川家の国際色豊かなお子様方にもこの古来から伝わる日本の暖房器具の優秀さを体感して貰うのだ。
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