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「やっぱ和牛ウマーイ!」
風呂に入って髭も剃ってさっぱりした由一郎はやっぱり由一郎の顔をしていた。が。
「日焼けとのコントラストで泥棒メイクの逆バージョンですね」
「でもツルツルよ? 藤間くん、スリスリしていいよ?」
「結構です」
藤間さんは由一郎の推薦で入社したと聞いた。真面目で几帳面でヴォーリズを主とした北米建築信者で、御誂え向きな人材だった事はよーくよーく解る。
でも何だか、俺のお邪魔虫感が凄い……とか思ってたら目が合った。
「宗くん肉ばっか取ってる! 野菜も食べなさい!」
「食ってるし……」
「いーや全然食べてない。ホラお椀貸して」
昔からこの人は面倒見が良く俺を甘やかしてばかりだった。多くは語らないくせに気づくと何でも先回りして……俺の性格の素地を作ったのは間違いなくこの人だ。
「大晦日、宗くんとダウンタウン見てカウントダウンだなー。何年ぶりだろ。てか、すっかりご長寿番組だなー。てか、松っちゃんの筋肉増強っぷりスゲー」
「年末年始は家帰ってよ。たまには両親と過ごせよ」
「宗くんと一緒なら帰るー」
「俺は碓氷村の実生活を肌で感じる為に住んでんの!」
「じゃあにぃにも感じるー。それに俺じゃなくて僕!」
何がにぃにだ。何が僕だ。いつまでも小中学生じゃあるまいし。てか、この場では俺のお邪魔虫感を強調しておきながら、佑との間には割って入るつもりか。
はっ……! まさか週末もここに居座るつもりか!? 俺と佑のラブラブ週末婚に水を差すつもりか!!?
「藤間さんの代わりにマンションチームに入って!」
「え〜〜ヤダ〜〜宗くんがにぃに〜〜って呼んでるって言うから急いで帰って来たのに〜〜」
こんな面倒くさい人になってるなんて夢にも思ってなかったし!!
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