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   朝。俺の布団の中には由一郎が居た。微睡みの中の温もりに佑気分で擦り寄ったら酒臭かった。最悪な目覚めだった。 「先輩まだ寝てんのか」 「ほっときましょ。バタバタしてるうちに嫌でも起きるでしょ」 「あ、(ささき)があっち出るみたい」 「サッシ、ガラス、畳……」 「川添工務店から何人?」 「三人連れて来てくれます」 「取り敢えずいい天気で良かった良かった」  二階は一番西側が納戸。北側は改装済みの階段室、大きな窓と廊下。襖を外すと宴会場みたいな殿様の御前みたいな、これぞ和風な造りだ。東海林さん曰くドニさんが『家族で雑魚寝』に憧れてそうなったらしい。  そこの所はしっかり残しつつカインくんのアレルゲンを取り払い、畳に慣れない人達でも寛げるベンチを各部屋窓際に設置する。 「畳のベンチ、いいね」 「こっちも一番東の部屋にガラスブロックが入るんで、朝が明るくなります」 「南向きの窓も大きくして、サイドをガラスブロックで装飾して……垂水くん、ガラスブロックの魔術師にでもなるの?」 「なれたらいいですね」  藤間さんはクラシックスタイルにグリーンゲイブルズ的ナチュラルカントリーを合わせるのが得意。由一郎も、同じくベースはあくまでクラシックだけど、アールを多用したガウディを彷彿とさせるぐんにゃりデザインと色彩を合わせた。  ヴォーリズ建築は採光や風通しを重視した大きな窓が特徴の一つだけど、俺は柔らかい光が好きだ。燦々と降り注ぐ陽光より、ガラスの歪みの中を透過してくる優しい光。  それを自在にデザイン出来たら─────
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