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「宗くんが風の谷の人みたいになってるー!」
騒音の中で目覚めた由一郎は煩い。業務用防塵マスクにゴーグル。俺は自分の為、腐海の毒から身を守れる勢いの装備をする。当然だ。
「納戸に全部片付けて! 畳上げる!」
「宗くんが鬼監督になってるー!」
誰が鬼だ。それに通常の現場にこんな大声出させる職人さんなんておらんわ。
畳はまだ全然綺麗。殆ど新品だ。全部外して養生シートを張り巡らせ、いざドリル!
「宗くんがゴーストバスターズみたいになってるー!」
「いちいち古い!」
「藤間くーん、平成生まれが昭和生まれをいじめるー」
藤間さんだって平成生まれだ。
まったくつくづく─────俺みたいな若造に、よくぞ『好きにしていい』なんてクライアントがついたもんだ。夢物語で幸運で奇跡だ。ここ碓氷村のカレーパンから始まった縁を、俺は未来に繋げる。
まずは来週ドニさんが訪れた時、手離すのが惜しくなるような劇的ビフォーアフターリフォームを完遂するぜ!
「いい柱だねー。壁、安心してブチ抜けるわー」
「フルスイングで宜しくー! 工務店さん到着したみたいだから下りるー」
川添社長にはダイニングの掘り炬燵をお任せする。あっちは切って穴を開けて、加工済みのパネルを嵌め込むだけだから半日で終わる予定。ドニさんの最初のリフォームで床下工事は完璧だったんで早い。
「川添社長! 遠いところありがとうございます! 職人さん達も宜しくお願いします!」
「みんなハリスホテルとスノーパークに釣られて、道中も遠足気分よ?」
「夜は宴会ですねー」
「前嶋くん、いよいよスカウトかなって期待もあるんだけど♡」
「残念ながら、ヤツは海苔を大量に持って来るだけです」
「あの海苔はF市の誇りだね!」
「どっちなんですか」
「どっちも捨てがたい!」
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