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「日暮れ早いなー。ゲレンデ、もうナイターが始まった。滑りたーい」
「有休まで我慢してください。あっ!藤間さんそれ木目が逆ー!」
「うわお! 最近視力がヤバいかも……」
「老眼?」
「誰がだ」
ゲレンデに点った灯りを見上げると、竜の背ジャンプ台も基底部に施された青いLEDの電飾で幻想的に浮かび上がっている。その上空に月も上がった。綺麗だ。
「日本の冬は美しいねー」
「スペインも四季はあるでしょうが」
「うん。でも、寒い夜に家族や恋人と寄り添って、炬燵で鍋つついて……ザ・日本の冬の原風景ってこんな感じだってDNAに刻みつけられてる」
「うん……」
由一郎は俺の頭をゴツゴツした手で撫で回し、一緒に窓の外を見上げる。だがすまん。俺が求めてるのは家族じゃなくて恋人のほうだ。佑の到着が待ち遠しくてしょうがない。高速道路で問題がなければそろそろ着く筈なんだけど。
「…………あ! 来た!」
「誰?」
「ダーリン!」
「はあ!? 宗くん! 俺に黙っていつのまに!」
急いで階段を駆け下り玄関を出ると、佑のバンが入って来た。トラックやらバッカン(※建築現場で出る廃棄物用の脱着式コンテナ)を積んだダンプやらが停まっている隙間に滑り込んで行く。
「佑!」
「見事にブルーシートに包まれたなー」
「事故しなかった? 疲れてない?」
「大丈夫大丈夫。宗ちゃん、ツナギ可愛いー♡萌えるー♡」
俺は一週間振りの佑に萌え萌えだ。
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