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   今日は食材じゃなく、ボードやウェア、雪山レジャー道具、それから贈答用の海苔、インスタント食品とお菓子をたくさん積んである。佑も大工さん仕様だ。明日は一緒に作業出来る。嬉しい♡ 「宗くん、紹介して?」  振り向くと由一郎が貼り付いたみたいな余所行きの笑顔で佇んでいた。家族への紹介は避けて通れない道だが、まだ二人のミーティングが済んでないのに! 「佑、あのこれ、兄貴……由一郎」 「お兄さん! 初めまして! 前嶋佑です! 弟さんとお付き合いさせて頂いてます!」  由一郎に隠す気はさらさらなかったけど、佑もそんな気は全くないらしい。俺はこの、佑の男らしさに惚れ抜いている。由一郎は暫く魂が抜けたみたいに何も言わなかったけど、やがて表情を緩めて右手を差し出した。 「初めまして。宗二郎がいつもお世話になってます。何も出来ない子で大変でしょう?」 (いや、俺を何も出来ない子にした大元のアンタが言うな) 「全然大変じゃないです。むしろそんなとこが愛おしいです」 (臆面もなく何言ってんだ。顔から火が出るわ。でも嬉しいぞ。愛してるぞ) 「前嶋くん……黒いね。日サロかなんか?」 (失礼な! 佑のコレはお仕事由来の天然物だ!) 「年がら年中日灼けと潮灼けです。漁師なので」 (そうだそうだ! 尊いんだ!) 「漁師……宗くんが食いっぱぐれる心配はなさそうね」 (……………(佑をチラッ) 「何があっても弟さんを飢えさせる事はしません」 (……………(イヤン♡) 「宜しく頼む」  あっという間に佑は由一郎のお眼鏡に適ったらしい。まあ当然だ。
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