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少し冷えた空気の中で──
失ったものの大きさを、改めて噛み締める。
人の目ばかり気にして、体裁を取り繕って…その為に、家族を犠牲にして来た報いが、これだ。踏みにじり、当たり散らして、家庭を壊したのは俺自身だ。
部下や同僚が、陰で俺を揶揄しているのも知っている。誰に何と言われようと、もうどうでも良かった。
この哀しみと喪失感を、埋める術など何処にも無い。叶うことなら、時間を巻き戻して、もう一度やり直したい。
「イヅミ…イヅミ、すまない…」
みっともなく流れる涙。
何度も鼻を啜りながら、俺は詫びた。
もう、何もかも遅過ぎる。
虚しく繰り返す謝罪は、誰の元にも届かぬまま、夜の深淵に消えていった。
── 終 ──
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