街で見かけたあの人

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私には付き合っている彼がいるけど、休日はいつも一人だ。 暇を持て余してショッピングへ出掛けると、奥さんに腕を組まれて買い物に付き合わされているあの人を見た。 手提げ袋を持っている手にはいつもは外している指輪もはめていて、見たくないものまで見えてしまう自分の視力の良さを呪う。 そのままフラッと入ったカフェで、頼んだロイヤルミルクティーがぼんやりしているうちに冷めてしまった。 一口飲むと甘みが増した気がして、彼が言っていた言葉を思い出す。 “甘味を一番感じるのは体温くらいの温度なんだよ” こんな関係はもうやめたい。 休日に恋人と並んで街を歩きたい。 人目を気にするような不健全な関係は終わりにしたい。 貰った指輪をテーブルに置いてお店を出ると、一歩前へ踏み出せそうな気がした。
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