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【夢たび景色】「時」について
以前、夢たび50『夢みるゾウガメ』でミヒャエル・エンデ作・『モモ』について少し書きましたが。
この『モモ』は1974年にドイツ児童文学賞を受賞したお話ですが、その中に時について主人公が考えるくだりがあります。
『未来が過去に変わるから、現在がある。
でも本当にあるのは過去と未来だけなんじゃ?
それか、現在だけしかないのかもしれない。
いずれにせよ、時間というものは存在する。
でもさわれない。つかまえられない。
だって時間はとまってないで動いていくから。
でも時間は、どこかからやってくるにちがいない。
風みたいなものなのかな?
ううん、一種の音楽かも。
いつでも響いているから、人間がとりたてて聞きもしない音楽なんだわ。』
(『モモ』作中より内容を要約して引用)
しかし児童文学とは言え、こういうお題を考察している時点で、もう立派に哲学だよなぁ。児童文学侮るべからず。笑
ちなみに、この本は小学校5年生の推薦図書です。小学生にはむずかしめかもしれないけれど、たぶん読めば一生モノな一冊かも。(うちの娘は読破してました)
でもって私は「この世界には『現在』しか存在していない」んじゃないかと思っています!
未来と過去は概念としてはあるけれど、存在するのは常に今、この瞬間だけ。
そんな小難しい話どうでもいいじゃんか、って思われるかもしれませんが、これね、けっこう重要。だって、
「現在しか存在しないのなら、絵に描いた餅であるところの未来を憂いてもしかたがないし、過去にこだわっていても無駄である」
ってことになるでしょ。
ようは「どーしようもない未来や過去を、ごちゃごちゃ悩む必要なんて、まったくねえってことよ!今を精一杯生きてれば、それでいいんじゃないかい?」って話。←なぜかイキナリべらんめえ調。
私が尊敬する野口宇宙飛行士も、以前に同じようなことを言われていました。
宇宙飛行士さんたちって、まるっと1個の地球を眺めてる人たちなわけですよ。だから俯瞰力も桁違いというか。
宇宙から地球を見ていた時に、
「僕は今、外から地球を見ているけれど、やがてもといた場所に帰り、いつかあとかたもなく消えて、地球の一部に還っていくんだ」
と感じたそうで。
(しかし単位が地球って。俯瞰できる人、少ないと思う~~。)
この俯瞰力で、日々、人々の抱える、くよくよしたり悩んだり怒ったりケンカしたりを見やった時、「そんな悩みはささいなもの」に思えるそうでした。
それは、「ちっぽけなのは自分じゃなく、抱えている問題がちっぽけ」だから。
「今自分はまちがいなく美しい地球に存在していて、やがてこの星の一部になる。
そう考えてみれば、『今、この瞬間、生きていることはすばらしい』と思えて、些末な問題などどうでもよくなる」と。
私も若い頃は今よりずっと悩み多き乙女だったような気がしますが、40歳=不惑をすぎたあたりから、本当にあんまりごちゃごちゃちっさいことでは惑わなくなりました。
いや、40になってもまだ全然迷ってるって言う人もいるから、みんながそうなるわけじゃないんだなとは認識していますが。
思うに、若いころからこういうテーマに関心を持ち、アンテナを張り続けてくると、40になるくらいまでには上記のようにけっこう経験値や知識を得られるので、その結果として惑わなくなるのかなと。
だから関心がないまま、なんとなく生きてきてしまうと、いつまでも若いころから進歩しない=惑ったままになるってことなのかなと。
私は10代から哲学がけっこう好きだったんですよね。
そして大学のころ、理数系や経済や法学をやっている友達が「哲学なんて、もっとも稼ぐのに役に立たない、なんのためにあるんだか意味不明な学問だ」みたいなことを言っていて、非常に腹立たしかったんですけれども。
人間ってお金稼いで、パンさえ食べていれば、それで=生きているって言えない動物なんですよ。
彼らはそこのところの重要度を理解できていなかったし、日本社会自体が、他の先進国と比べて、物質的なことばかり追い求めがちだと思います。ありていに言えばそこは全然、先進国じゃなくまだまだ後進国なんです。
というか日本って、未だに後進的な部分がかなりありますよね。
たまたま一時期儲かっていて、はぶりのよい時代があったからって、けっして自分たちを、他と同じような先進国民だと過信するなって言いたい(苦笑)。
日本はあくまで世界の果て、極東の僻地のちっさな島国です。ただでさえ常に井の中の蛙になりがちな環境なんだから、おごるべからず。
いつも控えめな認識でいて、ちょうどいいくらいなんじゃないでしょうかね。
で、話を戻しますけれども。
「なんのために生きるのか」「人間とは、時とは」みたいなテーマに関心なく、ただ若さや、物質的な豊かさなど、外面のみで自分や他人を評価していると、中年以降に起きる「中年の危機=ミッドライフ・クライシス」に陥りやすくなるんじゃないかなーと思います。
星の王子さまに「大切なことは目に見えない」という有名なフレーズが出てくるけれども、「大切なことほど、目に見えない」というのが私の実感かもしれないな。
神の意図だかはわかりませんが、とにかく真実ほど容易には理解できないように秘されているもので、それを人生かけて探し、解き明かしていく。
生きるってそんなものかなーというのが、アラフィフになった今の気持ちです。
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