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黒い影が舞い降りた時
この時、武志は坂口センター長から
会議室に呼び出しを受けていた。
会議室には同僚の和彦と他部署の
管理長が入っていた。
重たい空気のなか坂口センター長は
武志たちに話を始めた。
「神戸センターのセンター長が
詐欺行為で警察に逮捕された。
警察からの捜査はこれからになるが、
オペレーターたちに動揺がないよう
管理長たちで気を配ってほしい」
「わかりました」
坂口センター長から詳細を聞いた
武志たちは、会議室を後にした。
「大変なことになりましたね」
「そうだな」
「今朝のニュースで大騒ぎでしたからね」
「神戸センターのセンター長の
安住さんと管理長の瀬戸野さんが
逮捕されたからな。
まったく、信じられないぜ」
「お金の魔力は恐ろしいですからね」
武志は、今朝のネットニュースで
自分の勤務するコールセンターで
不祥事が起こったことを知っていた。
これは、会社全体の問題として
社長をはじめ役員が協議していると
武志はそう感じていた。
「これは、根深い事件になりそうだな。
外部に漏れないように注意しよう」
「そうですね。
些細なことでも尾ひれがついて
大きくなりますからね」
ここで、事件の詳細を説明しよう。
それは、一昨年から請け負っている
コロナワクチン接種予約を
神戸センターで受注していた。
コロナワクチン接種窓口として
配置しているオペレーターが
不足していたにもかかわらず、
稼働100%として神戸市に提出していた。
ところが、神戸市の職員が
神戸センターを視察した時に
安住センター長と瀬戸野管理長の
挙動不審な言動に怪しさがあった。
そこで、神戸市は第三者機関に
調査を依頼したことで不正受給が
発覚したということだ。
この結果を受けて神戸センターに
特捜部のメスが入り、
センター長である安住光男と
管理長の瀬戸野俊介が逮捕された。
この逮捕を受けて安住光男と
瀬戸野俊介は懲戒解雇となった。
以上が事件の全容となる。
「これからが大変だな」
武志は、自分の席で溜息をついていた。
「たとえ自分が知り得た情報だとしても
規律に違反することは許されることではない。
これは、コールセンター業務に携わる者の掟だ。
掟に背いたら罰を受けなければいけない」
これは植村さんから聞かされた言葉だ。
これからは武志が管理者やオペレーターを
引っ張っていかなければならないのだ。
「オレは管理長だ。
管理者とオペレーターはオレが守る」
武志は、これから暗雲が立ち込めるなかで
管理長をしての責務を果たすと誓った。
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