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2019年の松島家
「あけましておめでとうございます」
今年も松島家で家族がそろって
お正月を迎えていた。
毎年恒例となっている
寛子のおせち料理と武志の具雑煮が
松島家での定番となっていた。
「さて形だけだが、
おとそ代わりの日本酒だ。
まずは、寛子だ。あけましておめでとう。
これからは、小説家でデビューしたんだ。
それだからと言ってくれぐれも
家事を怠ることのないようにしてくれよ」
「あけましておめでとうございます。
小説家としてお仕事をやれたのは、
あなたのおかげです。
あなたには、感謝しています。
主婦業との二足のわらじで
できるかわかりませんが、
できる範囲でやっていきます」
「次は、真樹だ。あけましておめでとう。
去年は、メンタルカウンセラーとして
頑張った1年だっただろう。
今後の活躍に期待をしているぞ」
「あけましておめでとうございます。
去年は、あおり運転で奇跡的に助かった
日菜子ちゃんをカウンセリングをして
心が開くまで頑張っていけたのは、
父さんが『最後まであきらめるな』
と言ったからできたんだと思っている。
オレは、この職業が教職以上に
大きな勉強をさせてもらっていると
思っているんだ。
その意味で、オレはこの職業を
選んでよかったと思っている。
父さん、今年も
この仕事で頑張っていくよ」
「おまえは、オレの若い時に
そっくりなってきたな。
父さんが母さんと結婚をした時は、
父さんが18歳だった。
その時に、母さんの妊娠がわかって
子供を産んでほしいと
父さんは母さんにプロポーズをしていた。
それも、授業の休講が張り出されている
掲示板だったから学生たちが、
『よく言った、頑張れ!』
と言ったのを覚えている。
この時に母さんのおなかにいたのが、
おまえと香織だった。
この時、父さんは母さんと
おまえと香織を守ってみせると
心に決めていた。
そして、父さんが母さんと
結婚をしてからおまえと香織が
生まれるのが楽しみでしかたがなかった。
そして、母さんが大学を卒業して
父さんが大学での進級が決まった
4月に、おまえと香織が生まれた。
初めて生まれた子供が
双子で生まれたことは、
父さんにとって
かけがえのない幸せだった。
真樹、おまえもいつか
心を許すことができる女性が
あらわれるだろう。
だけどな、これだけは
覚えていてほしい。
人間はな、外見ではなく
内面であらわれる。
できるならば、心の穏やかな
相手に出会うことを願っている」
武志が、初めて真樹に自分の心情を
伝えたのは初めてであった。
18歳で子供の父親となることを
決めた武志が、長男である真樹に
これからの将来を見据えていけと
言ったのだろう。
それは、母である寛子も同じであった。
真樹が、武志の若い頃に
そっくりになったことを
頼もしく感じていたのだ。
そして、これからの子供たちの
未来に幸あれと願ってやまないと
寛子は思っていた。
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