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いとこの養女となった日菜子ちゃん
「武志、あけましておめでとう」
「兄さん、あけましておめでとう」
「あけましておめでとうございます」
武志の家に深江町に住む
武志のいとこが嫁と養女となった
日菜子ちゃんを連れて
新年のあいさつに来たのだ。
日菜子ちゃんは、あおり運転で
実の両親を亡くしたことで
一時的に言葉が出なかったのを
真樹が一生懸命カウンセリングをして
言葉が出るまでになった。
そして、日菜子ちゃんに
身寄りがいなかったことから、
いとこが養女として引き取ったのだ。
日菜子ちゃんが来てから、
いとこの家が明るくなった。
そう言った親戚が話してくれた。
「せっかくだから、
兄さん上がっていけよ。
寛子が、おふくろ直伝の
おせち料理をつくったんだよ」
「おぉ、そうか。
叔母さん直伝ならば、
寛子さんは免許皆伝だな」
そう言った武志のいとこは、
嫁と日菜子ちゃんと一緒に
武志の家に入っていった。
家の中に入ると真樹と香織
そして浩之が待っていた。
武志は、いとこに形ばかりの
日本酒で新年のあいさつをした。
そして、日菜子ちゃんに
お年玉を渡していた。
それを見て、真樹、香織、浩之が
それぞれ日菜子ちゃんのためにと
お年玉を渡していた。
浩之は、去年の3月に看護大学を
卒業して正看護師として働いていた。
それも、寛子が事故で入院をしていた
長崎医療センターで整形外科病棟の
看護師として働いている。
そのため、浩之は大村市にある
長崎医療センターの独身寮で
生活をしている。
「どうだ?浩之、仕事はなれたか?」
「まだまだかな?
学校の実習と違って、
患者さんとの
コミュニケーションが
大切だと思ったよ。
だけどさ、オレのいる独身寮で
母さんのリハビリを担当した
前島先生と森崎先生がいるから、
いつも『母さんは、どうしている?』
ってよく聞かれるよ」
「そうか、寛子さんが事故に遭って
もうすぐ3年になるんだな。
泉川病院では、治療が難しいと
長崎医療センターで手術をして
リハビリをして退院できたんだからな」
この時武志は、寛子が事故に遭った
3年前のことを思い出していた。
あの時、福岡センターに出張していた
武志に南島原警察署からの連絡で、
寛子が交通事故に遭ったことを
知らされたのだ。
そして、出張先の福岡から長崎に戻って
寛子の搬送先である泉川病院に駆けつけ
意識が戻ってほしいと涙を流したこと。
そして、長崎医療センターに転院となり
事故で損傷した骨盤と左膝の手術をして
リハビリを毎日続けたことで、
つえを持って歩けるようになったこと。
それが、鮮明に思い出されていた。
それだからこそ、日菜子ちゃんの両親が
あおり運転で亡くなったことは、
武志にとって人ごとではないと思った。
「日菜子ちゃん、お着物着ているのね」
「気がついてくれた?お義母さんが、
日菜子のために呉服屋さんに行って
お正月の晴れ着をあつらえてくれたの。
着付けは、お義母さんがやってくれたの」
「伯母さんは、着付けの講師だものね。
ほんとにきれいに着付けているわ」
「おばあちゃんが、日菜子に
着物を着せてくれたの。
おばさん、きれい?」
「日菜子ちゃん、とってもきれいよ」
「まるで香織の小さい頃を思い出すな。
香織も正月に着物を着たら喜んでいたな」
それを聞いていた真樹と浩之が、
吹き出していた。
「お父さん、恥ずかしいからやめてよ」
「ほんとにさ、正月の着物もそうだけど
おまえ、幼稚園の制服を着るの嫌がって
母さんを困らせてなかったっけ?
オレとおそろいは、
イヤだって言っていたよな?」
「そうだったわね。
真樹と香織は双子で生まれたから、
二人には色違いの服を買ったのを
思い出したわ」
「お母さん、日菜子ちゃんがいるのに
小さい頃のことを言わないでよ」
香織は、顔を真っ赤にしていたが
武志と寛子は、初めて生まれた
真樹と香織がかわいくてしかたなかった。
そして、3番目になる浩之もかわいい。
武志と寛子にとって、3人の子供たちは
いつまでもかわいいと思った。
これから先、日菜子ちゃんの成長を
いとこは夫婦で見守っていくだろう。
日菜子ちゃんの成長を楽しみに思う
武志と寛子であった。
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