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天使がくれた贈り物
春の訪れが来たある日のこと。
香織が龍也と一緒に
武志と寛子のいる実家に来ていた。
「実はね、赤ちゃんができたんだ」
「香織、よかったわね」
実は、龍也が松島姓を名乗る
大きな理由は香織の妊娠であった。
香織の妊娠がわかった以上、
龍也の元家族と絶縁しなければ
香織と生まれてくる子供に
危険がおよぶと判断したからだった。
「孫が増えるのは嬉しい限りだ。
香織、体を大事にして
元気な子を産むんだぞ」
「お父さん、ありがとう」
「龍也くん、香織を頼んだぞ」
「はいっ」
香織の出産予定月は11月となる。
武志と寛子の孫は葵、篤、湊、涼がいる。
そして、今年の秋に新しい孫が加わる。
「去年はいろんな意味で厳しかったから
コウノトリが香織のもとに来たのね」
「幸せを運ぶ天使がくれた贈り物だな」
武志と寛子は、元々子供が大好きだった。
学生結婚で夫婦となった二人に
真樹と香織が双子で産まれてから
子供を中心とした家族となっていった。
学生の時武志は、他の学生に
合コンに誘われたことがあった。
しかし武志は、その誘いをきっぱりと断った。
「武志は付き合いが悪いな」
と言われることがあったが、
武志自身は家族のために大学を卒業して
働くんだと強い気持ちで臨んでいたからだ。
「オレには守るものがある。
そのためにも卒業するんだ」
武志の強い意志を貫いたことで
武志は卒業式では総代として
学長からの卒業証書をもらった。
その武志の気性を真樹と浩之が
受け継いでいった。
二人が子供を守る親となったことを
一番に喜んだのは武志だった。
今年の秋には香織にも家族ができる。
香織は寛子の気性を受け継いで
芯の強い女性となっていった。
月下美人のように凛とした女性だった
寛子と出会い夫婦となったことを
武志は嬉しく思っていた。
武志と寛子が夫婦となってから
今年で珊瑚婚式となる。
「オレたちも歳をとったな」
「お父さん、まだまだこれからよ。
お母さんと一緒にあたしたちの
赤ちゃんの成長を見守ってよ」
「そうだな」
武志は、これからも寛子と共に
天寿を全うするまで生きていくだろう。
新しい命の誕生を楽しみに
これからも生きていこうと
武志はそう思っていた。
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