勘違い女の魔の手から救出せよ!【後編】

1/1
前へ
/84ページ
次へ

勘違い女の魔の手から救出せよ!【後編】

「話し合いの最中に悪いな」 会議室に入ってきた植村センター長が 警察官を連れてきていた。 「宮下真弓、有印私文書偽造罪ならびに 偽計業務妨害罪で逮捕する」 武志と寛子は、突然のことで 警察官の威圧感に固まっていた。 「武志、実は宮下さんが就業時間に 私用で個人情報を流用していたのが わかって調査していたんだ。 その結果、武志の個人情報を使って 婚姻届を出したとわかったんだ。 結局、婚姻届は不受理になったそうだ。 あと、宮下さんの行為は以前から 武志から相談を受けていたからな」 「あたしは、主任と結婚したかったんです」 真弓は、人目もはばからず大声で泣き出した。 その姿を見て植村センター長は言った。 「いくら好意を寄せていたとしても 規律に違反することは許されることではない。 これは、コールセンター業務に携わる者の掟だ。 掟に背いたら罰を受けなければいけない」 真弓は、密かに武志の個人情報を手に入れ 婚姻届を作成して役所に提出したのだ。 武志たちが婚姻届を出す際に 不受理申出の届けを出していたことで 役所に婚姻届が受理されることはなかったが、 真弓の行為はれっきとした犯罪になる。 真弓は、警察官に連れられて会議室を出ていった。 そして、植村センター長から武志に言った。 「さて、俺は大村センターに異動になるが、 おまえも大村センターで働かないか?」 「オレが大村センターにですか?」 「そうだ。今回のことで夫婦一緒の勤務が 困難になるのは目に見えている。 それならば、俺の目の届く場所で勤務するのが 1番だと考えている」 「わかりました。異動を承諾します」 「異動の前に寛子さんが嫁さんだと言えよ。 今回の被害者は寛子さんなんだからな」 「わかりました。 ご配慮いただきありがとうございます」 「寛子さん、そういうことだから これから先のことを話し合ってくれよ」 「わかりました」 こうして、武志のストーカー被害はなくなった。 会議室を出た武志は、宮嶋管理長に 大村センターの異動を報告していた。 「そうか、大村センターに行くのか。 武志、大村センターでも頑張れよ」 「ありがとうございます」 「寛子さんが奥さんというのは うちの部署では周知が済んでいる。 うちのオペレーターは、お喋りだからな」 「そうでしたか」 「寛子さん、これからも頼むよ。 新人オペレーターの教育係として 期待しているからな」 この時、寛子は赤のストラップをつけていた。 オペレーター業務で功績が認められて 教育係として任命されたのだ。 これから先、家族を守るために 自分を高めていこうと武志は思った。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加