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一筋の光が差した時【前編】
神戸センターの事件があってから
3ヵ月が過ぎていた。
事件発覚の時は張りつめていた
空気が社内で流れていたが、
今は落ち着きを取り戻していた。
そんななかで武志は、
新たな家族が増えて充実した日々を
妻の寛子と一緒に送っていた。
最近になって、武志と寛子は
植村さんのやっている仲人業に
興味を持つようになっていた。
これまで結婚式の仲人を
夫婦で引き受けてきたことで
婚活する若者の手助けをしたいと
考えていたのだ。
そのことを話し合った時に
仲人業をしている植村さんに
話を聞くことになった。
「植村さん、お忙しいところ
私たちのために時間をいただき
ありがとうございます」
「いやいや、堅苦しい挨拶はなしだ。
今日は元上司としてではなく、
仲人士として話をしたいと思っているからな」
「ありがとうございます」
植村さんは、ウェディングプランナーとして
仕事をした経験を活かして仲人業を始めたのが
3年前のことであった。
かつて、大村センターでセンター長として
陣頭指揮を執っていた時に
交通事故に遭った寛子のために、
武志を長崎医療センター近くの
ウィクリーマンションに住まわせた
立役者でもあった。
植村さんは、仲人活動をする時に
日本仲人協会が主催している
婚活アドバイザー養成講座を受けて
仲人として加入したのだ。
「実はな、長崎県には加盟仲人が
少ないので武志と寛子さんが
仲人になってくれるのは嬉しいんだ。
俺の入っている日本仲人協会は、
加盟する時の初期費用を少なくすむ
良心的な協会なんだ。
俺は婚活業界をたくさん見てきたが、
ほとんどが初期費用を高額なのが多い。
それもあってきちんと弁護士さんが
承諾した書面を提示して会員が安心して
入会できるように計らっているんだ」
「なるほど、ここまで良心的だと
お世話をしていく仲人も安心できますね」
「そうなんだ。
最初は何から始めていいかという
不安がないように徹底的な研修を
行っているんだ。
だから難しく考える必要はないからな」
それから一週間後、武志と寛子は
婚活アドバイザー養成講座を受けていた。
コロナの関係でオンラインでの開催となった。
武志は、この日に有給休暇を申請していたので
寛子と一緒に講座を受けていた。
講座が一通り終わったところで
現役で活動をしている仲人さんが
スピーチをする時間になった。
「寛子、いよいよだな」
「そうですね」
この日、植村さんがオンラインで
仲人スピーチをすることになっていた。
その内容については次回の講釈で…。【後編に続く】
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