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アストは急ぎ地響きのした島の東へと向かった。
この島は、西側が海と接する浜辺となっており、東側は断崖となっている。以前は人が暮らしており、立派なお城もあったが、みな都合の良い大陸へと移動をした。
その為現在この島は精霊や動物、植物達にとって楽園となっていた。
アストは何者にも干渉されることのない平和なこの島に、何かヨカラヌモノが入ってきたと言う胸騒ぎを抱えながら、島の東へと向かった。
裸足であるアストの足に霜が容赦なく痛みを与えたが、そんなことは気にならないほど彼の心臓は昂っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
地響きのした辺りに辿り着くと、長い黒髪を丸めた精霊がアストを見つけて急ぎ飛んできた。
「ア、アスト様、大きく、黒いものが……」
彼の顔の前で怯え震える声でそういう精霊に彼は優しく声をかける。
「シオン、俺が来たから大丈夫だ。木の隅で隠れてろ」
「で、でもあんな大きなもの、アスト様でさえ……」
涙目でそう言うシオンのお腹をアストは人差し指で『ぷにっ』と突いた。
「シオン、俺は誰だ?」
その問いにシオンは頸を傾げた。
「精霊の王、我らの父、アスト様です。」
「そうだ。 高貴な精霊の王に触れられる者などこの世にいねぇよ。 誰も俺を傷つけることなど出来ない。 だから安心しろ。」
「はぁっ、はい!」
シオンはアストの言葉に安心したように返事をすると、パタパタと木々の上へと飛んでゆく。
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