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「さてと……」
飛んでゆくシオンを確認して、アストはゆっくりと森を抜けた島の東側、断崖となっている場所へと近づく。
木の背面に隠れながら目を凝らす。すると巨大な黒い塊がそこにはあった。
(なんだ? あれは……ドラゴン?)
自分の身体の3倍以上も大きく、黒く硬そうな鱗に覆われて、頭部には2本の角を生やし、金色のギョロリと光る瞳を持ったドラゴンがそこには存在した。
そう分かった瞬間、“バチッ!!”とアストとそのドラゴンは目があった。
(やばい! 見つかった!)
素早く木にアストは身を潜めた。あのドラゴンが自分に触れられる筈はないと分かっていても、あの大きさで踏まれたら流石に潰されるかもしれないと、脳を過る。
しかし殺される訳にはいかないと、シオンや自分に身を寄せる小さな精霊達を思い出し、心を奮い立たせる。
(アイツらを守れるのは自分しかいない。)
自分自身に『大丈夫』と言い聞かせ、アストは大きく深呼吸をすると隠れていた木から出でドラゴンの元へと向かった。
「グルルルル……」
ドラゴンはアストが姿を現すと、『バサッ!』と大きな翼を広げ喉を鳴らした。
しかしアストはそれに驚くこともなく、ドラゴンへと近づき、巨大な生き物を睨み付けた。
「よう、ここは俺の島だ。なんのようだ?」
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