1.ファンタジーはじめます!

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 オマエと出会ったのは、霜の降るとっても寒い朝だった。  東の空に登る太陽と共にオマエは俺の前に現れて、 「グルル……グルツ…」と咽喉を鳴らし俺に言葉を伝える。 「すまねえ、流石の俺でもドラゴンの言葉は分からねえよ。」 するとオマエは大きな顔を俺の唇へと近づけた。  硬く冷たいものが唇に当たっていたのは一瞬にして柔らかいものへと変わって、目の前のドラゴンは耳の先が尖っているエルフとなってて。 「なっ!」  動揺する俺を気にする様子もなくオマエは平然として言葉を述べる。 「私は、2000エア先、シラベの森からやってきた。」  そう言って、オマエは俺の手を取り地面に片足を跪いた。 「それはそれは、遥々どうもお越しくださいました!それでいきなり現れてオマエ用件は一体なんだ?」  マイペースなオマエに腹が立って口早に俺は相手の要件を問うた。 「歳が千を超えた時、この地に赴くよう伝承に従って、ここに来た。」 「伝承? ドラゴンとエルフが契約を結んでるっていうのか? 俺はそんなもの聞いたことはないぞ。」 「今から言う言葉は、旭暉(きょっき)の龍となる者だけに受け継がれし言葉。」  オマエは大きな身体を起こし、俺をギロリと見下ろして口を開いた。 「旭暉の龍は、アスト王の夫にして、唯一彼を殺せる者。」
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